一昨年、妻のメガン妃とともに英国王室を離脱したハリー王子が書いた話題の自伝、『Spare』が1月10日に発売されました。
そのセンセーショナルな内容は、日本でも広く報道されているので、ご存じの方も多いでしょう。
(王子の本名はヘンリーですが、イギリスでは「ハリー」として通っているので、ここでもそう呼びますね。
日本では「メーガン」という表記も見るメガンも、音としては圧倒的に「メガン」だと思うので、そうします)
イギリスのほか、ドイツ、アメリカ、フランスなど数か国で同時刊行予定だったこの本は、スペイン語版が「誤って」早く発売されて内容が取り沙汰されたり(わざとじゃないのか? という勘ぐりアリ)、ハリー王子自身がイギリスやアメリカでインタビューに応じたりしたこともあって、刊行前後は、マスコミも巷もこの話で持ちきり。
ご近所の立ち話でも、友人との会話でも、誰と話していても必ず一度は話題にのぼっていました。
刊行の当日は書店の前に行列ができたそうで、ロンドンの街なかの書店も午前0時に店を開けて対応したそうです。
『ハリー・ポッター』か、人気ゲームの最新版みたいですね。
あ、こっちもハリーだ!笑
書店はどこも平積みにしたり、特別な書棚を作ったりして大々的に売り出しています。
これはわが家からいちばん近い大型書店の店先の写真で、店内にも同じような棚がありました。
発売と同時に半額というのはおもしろいですよね。
書籍の再販制がないイギリスでは、書店の裁量で値段を決めることができます。
それにしても、初日から半額というのは不思議。
ものすごく売れるとわかっているなら、高くても買うだろうから、定価にする方が利益が上がる気がするというのがわたしの素人考えですが、もちろん何か戦略があるのでしょう。
安くなっていると、買うつもりがなくてもつい買っちゃうのかな。
この本は刊行日に英国内だけで40万部も売れて、ノンフィクションの分野で英国史上最高の記録になったそうです。
今どきは電子書籍やオーディオブックもあるし、もちろん国外でも発売されたので、実際にはずっと多いんでしょうね。
わたしはまだこの本を買っていません。
本の発売に先立ってストリーミングされている、ネットフリックスのドキュメンタリー番組、『ハリー&メーガン』も、全6話のうちまだ第3話の途中を観ているくらいです。
時間がなくて観られないのではなくて、内容にもやもやして、長く観ていられないのです。
ハリーの言いたいことは、なんとなくわかる、というか想像できる気がするのです。
将来に国王になる兄の「スペア(何かあった時のための予備)」として育ち、12歳で母親を亡くした悲しみと執拗にプライベートの取材をしたパパラッチへの憤りが癒えないまま、やんちゃな生活に走ったハリー。
やっと出会った恋人は黒人とのミックスで離婚歴もあるアメリカ人だったので、保守的な家族にあまり歓迎されない、あるいはそう感じてしまった。
そりゃあ、文句も言いたくなるのでしょう。
兄弟姉妹の間でなんとなく競争心が生まれたり、家族に不幸が起きたりすることは、王家でなくてもふつうによくあることですが、王室に生まれ育った彼には、他の家族と比べようもなかったんでしょうね。
友だちと心を打ち明けあったりしなかったのかな。男の子だからかしら。
それとも王家の事情はやたらに打ち明けてはいけないと子どもの頃から言われていたのかもしれません。
(いやでも、他人さまにやたらに家の事情をしゃべるな、とは、一般の家庭でもある程度言われますよね)
でもね、だからと言って家族に確認も取らずに王室を抜けることを発表したり、本やマスコミを使って家族の会話を公に晒したりするのは、人としてルール違反な気がするんですよね。
つまり、気持ちはわかる(気がする)けど、やり方がよくないんじゃないかと思うのです。
大胆な手段に出るほど怒って傷ついていて、衝撃的な発言で注目を集めたいのかもしれないけれど、去年96歳で亡くなったおばあさまの故エリザベス女王はさぞや胸を痛めただろうと想像すると、おばあさん好きで女王のファンでもあったわたしとしてはどうも気分がすっきりしません。
お年寄りにはやさしくしてほしかったなあ。故女王が王室を大切にしていることはハリーもよくわかっていたでしょうに。
他にやり方はなかったのかなあ。
きっと、なかったんでしょうねぇ。思いつかなかったんでしょうねぇ。
的確なアドバイスは受けたんだろうか。
このハリー本は、王室離脱を超えて、思わぬところにも波紋を広げています。
特に陸軍からアフガニスタンに派遣されていた時、タリバンの兵士を25人殺した、兵士がチェスの駒のように見えた、という発言が気になっています。
戦場では人を人として見ていたら戦えない、という前書きがあるようですが、そんなふうに人の命を表現すること自体が衝撃で、一般人としてはまず彼の人格に疑いを持ってしまいます。
従軍経験のないわたしには想像がつきません。
でも、この内容には陸軍が大あわてでした。
「そのような情報を公開することは正しくないし、相手の兵士をチェスの駒に見立てるように陸軍が教育したと思われることも心外」と取材に応じた陸軍の元上層部が話しています。
戦争だったのだから、ことはハリー個人のことではなくて、英国陸軍の責任問題にもなるのです。
これまでにも荒っぽいことをしてきたタリバンのこと。
この先、何か報復を企てるかもしれません。
イギリスという国に対して?
それともハリー本人やその家族に直接危害を加えるとか??
そうだとすると、家族を守りたいから王室を出るというハリーの「信念」とは正反対の効果になってしまうのでは?
ちょっと、やりすぎじゃない?
やっぱりやり方がよくないと思えてしまって、内容が少し気になりながらも、本を読もうとまで思えないでいたのです。
ところが。
本の発売翌日、最初の写真を書店の前で撮っていたら、すぐ近くにいた20代ぐらいの女の子に声をかけられました。
「もうこの本買った?」
心を読まれたようで、ぎくっとしながら「まだなの、あなたは?」と聞くと、彼女はとんとんとヘッドフォンを叩いて、こう言いました。
「今、聴いてるとこ。ハリーの声がなかなかいい感じ」
おお、オーディオブックも同時発売だったのね。
そしてハリーは自分で朗読しているのか!
わたしは好奇心を抑えきれませんでした。
「それで、内容はどう?」
「まだ聴き始めたところだからよくわからないんだけど、本を読み終わった友だちが言うには、マスコミから流れてくるエピソードは、センセーショナルに解釈されてるみたいなんだって。だから自分で読んで(聴いて)自分がどう感じる確かめたいと思って」
うーん、そうか。
実は、発売日に書店に並んでいた人たちの多くが、「いろいろ言われているけど、自分で確かめたいから本を読む」と話していたのでした。
やっぱり自分で読んだ方がいいかなあ。
そういうわけで、この本を読むべきか、読まざるべきか、まだぐらぐら揺れ続けているわたしです。
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