2020年ブックカバーチャレンジ後編

ブックカバーチャレンジ、今日は後半の3冊です。

前回はアガサ・クリスティー関連とイギリス紀行という感じでしたが、今回は小説です。

古いものと新しいものを混ぜてみました。

お好きなものが見つかるかな?



ブックカバーチャレンジ第5日

『倫敦塔・幻影の盾』に入っているとても短い『倫敦塔』。

ロンドン塔のことを日本の文豪が書くとどうなるか。わたしは呪われた気がしています。笑

Day 5 『倫敦塔』
夏目漱石 著(新潮文庫『倫敦塔・幻影の盾』より)


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夏目漱石は『吾輩は猫である』が大好きで、今もよく読み返します。でもイギリスの話ではないし、他の方も挙げていらしたので、今回は『倫敦塔』を。

大昔に買った新潮文庫の短編集に入っているとても短い、小説ともエッセイともつかない不思議な作品です。


幽閉や処刑の歴史が長いロンドン塔を見学している漱石は、霧の向こうのパラレルワールドに入っていきます。

そうかと思うと、また戻ってきては別の世界へ。

その移ろいが塔のおどろおどろしい歴史やイギリスのくらい灰色の空(当時はきっと霧も濃かったはず)と重なり合って、100年以上前のロンドン塔がぼんやり浮かんでくる......気がするのです。

最後にはなんとなく『坊ちゃん』がいいそうなセリフがあること、自分で「うまくいかんので......やむを得ない」と書いていることなどもおもしろい。


これを読んでからなんだか漱石に呪われてしまい、ロンドン塔にはやたらに入ることができません。



ブックカバーチャレンジ第6日

気晴らしに犬を連れてボートでテムズ川下りの旅に出ることになった英国紳士3人。その旅はおかしなトラブルの連続で、という有名なユーモア小説。
でもユーモアだけでなく、歴史、皮肉、緑の風景、犬、どこをとっても、しみじみと英国らしい作品です。

Day 6『ボートの三人男』(ジェローム・K・ジェローム 著 丸谷才一訳)
“Three Men in a Boat” by Jerome K. Jerome

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ユーモア小説と言っても、それだけではありません。テムズ川を下りながら、英国の歴史や地理が語られ、大真面目な文明論や鋭い考察やたっぷりの皮肉が交わされ、静かな、時に詩のように美しい風景に出会います。

このいろいろな要素が絶妙のバランスで組み合わさっているところが大好きです。

大笑いした直後に突然、美しい情景や柔らかい心情の描写が始まって、そのまま章が終わってしまい、とても次のページに進む気になれず余韻を幸せに楽しんだこともありました。


犬を連れているというものとても英国らしい。犬は英国人の友だちです。

イングランドを旅したことがある方なら、読書中ずっと川のせせらぎと鳥のさえずりが聞こえて、太陽の下でしなやかな柳が揺れるのが見えているんじゃないかなと思っています。

この中公文庫版、丸谷才一の翻訳も、井上ひさしの解説も、和田誠のカバーも全部マッチしていてとても好き。



ブックカバーチャレンジ最終日

最後は大好きなジェイン・オースティンの『高慢と偏見』にしようと思っていたのですが、自分でもドラマや映画を見すぎて本の印象が薄れつつあるし、有名すぎる。
という訳で、せっかくなら日本でそれほど知られていない本をご紹介します(すでに邦訳も出ていますが)。

ほのぼのとしたやりとりの背後に渦巻く何か。
その描き方が見事で、最近読んだ英国の小説ではいちばん好きです。
2018年の英国ベストセラー。

(邦訳版をキンドルで読んだのは覚えているのですが、原書も見つからないので、両方の借りてきた写真で失礼します)

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7日間のチャレンジ、過去や自分を振り返るきっかけになって、懐かしかったり、笑っちゃったり、皆さんとおしゃべりできたりで、とても楽しかったです。

よい経験を与えてくださったMさん、ありがとう!
次に会える時には赤ワインを飲みながら本の話もしようね。


Day 7 “Eleanor Elephant is Completely Fine” by Gail Honeyman
邦訳『エレノア・オリファントは今日も元気です』(ゲイル・ハニーマン 著 西山志緒 訳)

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ちょっとコミュ障なエレノア・オリファントと、彼女を取り巻く人たちのほのぼのとしたやりとり。

でもその背後には何かが見え隠れします。

その描き方、こちらに見せてくるバランスが絶妙で、特にダイナミックに展開する後半はページをめくる手がとまりませんでした。

いろいろ言いたいのですが、しゃべりすぎてお楽しみを奪わないように、超絶おすすめとだけ言っておきます。


この小説は著者のデビュー作にして、2018年の国内ベストセラー第1位。

数々の章を獲得して(候補にもなって)、自作が待たれます。

最近注目されているSally Rooney(サリー・ルーニー)というアイルランドの作家もテイストが似ていて、わたしも好きなんですが、選ぶとしたらこっちだなあ。


邦訳も出ていますが、英語を話す方ならおすすめなのがオーディオ版。

小説の舞台であるスコットランド訛りで朗読されているので聴き取りのハードルはやや高め。

でもこの訛った朗読が本当にチャーミングなんです。

朗読の人、お見事!

間の取り方でセリフもおかしみも倍増するし、おすすめです。


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というわけで、ブックカバーチャレンジを載せてみました。
イギリス関連に絞ったので、皆さんにもご興味あるものがあったら嬉しいです。

今回このチャレンジをしてみて、好きな本の何が好き、とか、その思い出を語るなんていうのもありだなあと思いました。
ブログの方でもたまにやってみようかなと思っています。

日本は緊急事態制限が解除されましたね。
それでもまだ100%安全ではないかと思うので、どうぞ気をつけてお過ごしくださいね。


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Commented by mypottea6 at 2020-05-28 06:12
おはようございます!
ずーっと以前にローラアシュレイが好きですと書いた日本在住 日本人です !
私の大好きなは" ボートの三人男 " を拝見してうれしくなって おじゃましました!
ほんっとに おもしろい本でした。訳が廃版になるといけないので 2冊かったのを覚えています。
でも 出演者は それなりの方達なのを知って
古き良き時代の話かなと ちょっと さみしく感じました、、。

以前のブルーベルの記事もとっても素敵でした。
ロンドンでは たくさんのカメラ雑誌で見ていて
私には めぐり合わない風景だったのですが、london smile さんにとっては 日常なんですね ^ - ^

コロナにも気をつけて、楽しい記事をお待ちしています!
Commented by londonsmile at 2020-05-28 17:49
*mypottea6さん*
おはようございます。ロンドンは晴れたさわやかな初夏の朝です。
ボートの三人男、お好きなんですね。2冊もお買いになったとはすごい! おもしろいですよね〜。イギリスらしさ満載だと思います。そうですね、時代は少し前ですよね。
SNSで友達が表紙がひとつ前のものを見せてくれたのですが、世界の池田満寿夫版でした。それもすてきなんだけど、わたしはこの和田誠版がしっくりくる気がしています。

ブルーベルの記事も見てくださってありがとうございます。今年は遠出できないので近場の小さな場所でしたが、カーペットのように広がっていると幻想的で本当にすてきです。もしイギリスにいらっしゃる機会があったら、ぜひ春を選んでみてくださいね。

そして引き続き、どうぞご自愛ください。
by londonsmile | 2020-05-27 16:54 | 本のこと、映画のこと、音楽のこと | Trackback | Comments(2)

londonsmile、ロンスマことラッシャー貴子です。翻訳をしています。元気な英国人夫とのロンドン生活も早いもので17年目。20歳の時に好きになったイギリスが今も大好き。英国内旅行や日々のいろいろを綴っています。お仕事の依頼や写真掲載のご連絡は非公開コメントでお願いします。無断掲載はご遠慮ください。


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