カテゴリ:翻訳のこと( 6 )

今月初めのことですが、大英図書館で開かれたInternational Translation Day 2017に参加してきました。

翻訳者や翻訳に関わる人たちが集まって経験を話したり、意見を交換したり、一緒に考えたりするイベントです。


主催は大英図書館ではなくて、English PENやFree Wordなどの文芸団体で、翻訳の分野としては全体にぐっと文芸寄り。

しかも他の言語から英語への翻訳をしている人が主な対象なので、これを日本語で読んでいる方にはあまり関係がないかもしれませんし、ブログのネタとしては誰にでも喜んでいただけるものではないかもしれませんが、イギリスでこういうイベントがあったということで、私なりの感想をレポートしますね。


私自身も日本語への翻訳が多いのですが、和訳に共通する点も違う点もあって大いに刺激を受けたし、翻訳を大きな目で見る良い機会になりました。

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(会場になった大英図書館。
数年前に大英博物館から一部の展示物が移され、マグナカルタやモーツァルトやビートルズの原譜などを見るならこちら♪)

丸1日たっぷりのイベントは、朝に全体で集まってパネルディスカッション、午前と午後の各セッションの後には、また全体でのワークショップがあって、最後はお酒を軽く飲みながらの交流、という流れでした。

参加者のお顔立ちを見回すと、やはりヨーロッパ系(英国人含む)が大半で、そこに世界中のいろいろなバックグラウンドを持った人が集まったという感じ。

もちろん見た目と話す言語がまったく違うこともあるので、あくまで印象です。受付した時の名札に日本人のお名前もで何人かお見かけしましたよ。

規模ははっきりわかりませんが、全体会場が255名収容ということなので、それにスタッフの方を加えて300人ぐらいだったのでしょうか。

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最初の全体パネルディスカッションでは、ますます多様化する社会での翻訳とその未来について、翻訳者や研究者の方がお話しされました。

移民の多い英国やヨーロッパの国では、言語や文化を超えてわかりあうことが日本よりもずっと深刻な問題ということを改めて感じ、基本に戻って、言葉について、わかりあうことについて考えさせられました。


その後のセッションは、午前午後とも4つの選択肢から選べたのですが、その内容は児童文学とYA、詩の翻訳、ジェンダーや人権を考えるもの、大英図書館の専属翻訳者の方のお話、アラビア語の翻訳に触れるものなど、バラエティーに富んでいました。

去年のマンブッカー・インターナショナル賞を受賞した韓国のハン・ガンさんの『The Vegetarian(邦題「菜食主義者」)』を英訳したデボラ・スミスさんもパネリストで参加していましたよ。

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(小部屋には文豪の名前が付いています。
文学好きの方にはたまらないのでは?笑)

午前の部では、私は文芸翻訳者ヘレン・スティーブンソンさんのお話を聞きました。育った環境から翻訳を始めた経緯、これまでの仕事、翻訳で心がけていること、毎日の日課から支払いのことまで本当に惜しみなく話してくれて感激。

直接の同僚や先輩のいないフリーの身には、経験に基づいたお話やアドバイスは本当にありがたいのです。

翻訳をしながらピアノも教えているヘレンさん、音楽の勉強が翻訳にとても役立っていると感じるそうです。

原書を読み込んでいると登場人物の声が聞こえてくるんですって。アートですね! 

そういえば日本の翻訳関係の方にも音楽に詳しい方が多いので、音楽と翻訳はやはり何か関係があるのかもしれません(そういう研究、あるのでしょうか?)。


その後は、用意されたサンドイッチで立食のランチタイム。パネリストや他の参加者と気軽に話せる機会でもあるのですが、昼休みにも詩の翻訳ワークショップ、翻訳研究の展示、専属翻訳者が案内する大英図書館ツアーなどのミニセッションが用意されていたので、急いで食べてどんどん参加という人も多かったようです。 

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私は休憩時間には、イーストアングリア大学(ノーベル文学賞をとって話題のカズオ・イシグロさんの出身校!)で翻訳を研究されている明石元子さんの展示にうかがいました。

明石さんのご専門はひとことで言うと翻訳の透明性。

たとえば大物作家の村上春樹さんが手がける翻訳は、まるでご自身の作品であるかのようにハルキ色が濃いけれども、彼は極端な例であって、一般に翻訳をする場合にはどこまで訳者の色を出すべきか、あるいは出すべきではないのか、ということをさまざまな角度から研究していらっしゃる、というお話をうかがいました。

世界各国の背景を持つ人たちを前にご自身の研究を説明される明石さん、頼もしかったです。

前からいろいろ教えていただいてお世話になっているのですが、ものすごくチャーミングな方なんですよ!

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(明石さんの展示のポスター。

どんどん宣伝していいよと言われたので載せちゃいます!笑)


午後にはまたパネルディスカッションを選択しました。

パネリストは文芸翻訳者、大英図書館の専属翻訳者、主に映像翻訳を通じて子どもが楽しく外国語を勉強できるシステムを広めている方たち。

字幕を付けて外国語を学ぶというのは初めて聞きましたが、生まれた時からタブレットやYoutubeになじんでいるビジュアル世代の子どもにはピンときやすいようです。

大英図書館という場での翻訳の仕事もおもしろそうだなと思いました。

大英図書館が専属翻訳者を採用したのは今年が初めてで、現在、翻訳に関連した企画が進んでいるそうなので、またイベントに参加してみたいと思います。

翻訳の範囲や可能性について視野が広がり、夢も広がって、明るい気持ちになったセッションでした。


そして最後はまた全体で集まってのワークショップ。

参加者がその場で作ったチームごとにセリフを英訳して、実際に即興で演じてもらうというもので、東ロンドン(若者に人気のエリア)で翻訳ものを専門に上演している劇団の俳優さんたちが舞台の上で楽しく盛り上げてくれました。

初めて会う人と一緒にその場で英訳と言うだけで緊張するのに、話の設定や登場人物の関係や年齢、状況などを手早く想像しながらの翻訳は難しかった! 

同時に、ふだん使わない部分の頭を使うことになって、とても新鮮でもありました。

発表されたセリフを聞くと、まったく同じ内容でも全然違う表現になっていたり、自主的に手話付きで訳したチームがあったり、と、発想がさまざま。

刺激を受けて、少しは頭が柔らかくなった(ような)気がします。

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(大英図書館の入り口付近。
誰でも使える勉強スペースは、いつでも大混雑。
登録すれば、書架にしまってある書籍も閲覧できます)

そして最後は交流タイム。名刺を出し合ってご挨拶することもなく(笑)、普通のパーティーのように、目があったら誰とでもおしゃべりできるというとても気軽な雰囲気でした。

たまたま話した方に貴重なアドバイスをいただいてありがたかったのですが、後で実はかなり有名な方だと教えてもらってドキドキ。笑 

自分の無知に焦りましたが、そのくらいみなさんが気軽におしゃべりをしていて、後輩を応援するとても良い雰囲気があふれていたということで!


イベント全体を通じてやはりヨーロッパだなあと感じたのは多言語の環境です。

違う言葉を話す国が地続きで隣り合っているヨーロッパでは、2、3ヶ国語を話す人がまったく珍しくありませんが、そういう人が意外と語学とはまったく関係のない仕事をしていたりします。

こうした環境の中で翻訳や通訳を仕事に選ぶ人は、やはり語学に興味があったり、特別に多言語を背景に育った人が多いよう。

今回お話を聞いた方の中にも5ヶ国語、6ヶ国語を話すという人が多くて驚きました。

そして多言語環境だからこそ、語学を仕事にするのは競争がとても激しいようです。


これまではイギリスにいながら英訳のことにまで頭が回っていなかったので、学ぶことが本当に多かった1日でした。

どの言語であっても、言葉や言語を超えてわかりあうためにさまざまな努力や試みをしているという点ではやはり同じ。

いろいろな角度から翻訳の話を聞くうち、目の前のことしか見えていなかった私も、翻訳をもっと大きな意味で捉える感覚を味わうことができ、お互いにサポートし合い、他の人に伝えるという考えも見えてきて、視野が少し広がりました。

またこういうイベントを見つけて、ぜひ参加してみたいと思います。


イベントの詳細はこちらからどうぞ


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(新しい10ポンド札になって話題のジェーン・オースティンの手書きの原稿も大英図書館で見られます♪)


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by londonsmile | 2017-10-14 17:55 | 翻訳のこと | Trackback | Comments(0)
ただ今、北イングランドの英国ガーデンをめぐる旅のおみやげプレゼントのご応募受付け中です。
ささやかなプレゼントですが、少しでもイギリスを感じていただけると嬉しいです。

非公開コメントなのでお返事はしていませんが、ご応募と一緒にいただいた温かいお言葉、嬉しく拝見しています。
ありがとうございます♪

10月5日まで受け付けていますので、ふるってご応募くださいませ♪


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今週、老舗書店Foylesで開かれた“Yours Sincerely, Giraffe”という本のイベントに行ってきました。


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(写真はFoylesの店内。
数年前に数軒隣りから移転して、モダンな本のデパートという雰囲気になりました)


この本は「ぼくはアフリカにすむキリンといいます」(偕成社)という日本の子ども向けの本の英訳版で、イベントは日本財団の主催。
今年は日本財団のイベントに本当にお世話になっています。
外国暮らしにはとても力強い味方だなあと実感しつつ、日本が紹介される場面に立ち会うのはとても嬉しいことだと感じます。

この日登壇されたのは、岩佐めぐみさん、イラストの高畠純さん、英訳をされたキャシー平野さん。
着物姿でご登場の岩佐さんはじめ、みなさんとても優しい雰囲気で、日本の文化の紹介もされたりして、和やかなムードでスタートしました。

実はこの本のことはあまり知らなかったのですが、既に6カ国語(ぐらい)に翻訳されている人気の絵本なのだそう。
著者の岩佐さんの「キリンとペンギンが出てくる本を出版する夢を見て、この本を書くことになった。私はそこに本当にある世界をのぞいて書いただけで、これは神様からもらったお話」という言葉がすでにおとぎ話のように美しくて感激でした。
また「息子に途中まで読み聞かせた時、『続きはないの? じゃあ書きなよ』と言ってくれたから最後まで書けました、息子のおかげです」というお話もすてき。
そんな温かい家族の絆のある方から出てきた言葉なら、是非とも読んでみたくなります。


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著者と翻訳者が日本語と英語の同じ部分を交互に朗読してくださったのもとても贅沢なことでした。
お二人ともとても優しくてすてきなお声で、登場人物が本当に話しているよう。
朗読に選ばれたやりとりはとびきりチャーミングで、この本のユーモラスな世界に引き込まれました。
子ども向けの本だけれど、やっぱり全部を読んでみたい!

翻訳されたキャシーさんは、ユーモアはこの本の大きな要素だと感じたそうです。
実はこの本、最初の英訳を読んだ版元には気に入ってもらえず、訳し直したりして、英訳版の出版までに6、7年かかったのだとか。
最初の訳は「ユーモアの微妙なニュアンスがうまく伝わっていなかった」ようで、同じ文章でも翻訳した言葉によって印象が大きく変わることに改めて背筋がビンビンに伸びた後、ガクガク震えました。が、がんばらないと!

翻訳のイベントではないので児童文学のお話もたっぷりあったのですが、ついつい私の興味は翻訳の話に。
翻訳のキャシー平野さんは、児童文学を多く翻訳され、最近では世界中で大人気のこんまりさんの『人生がときめく片づけの魔法』を英訳されてたいへんご活躍の方なのです。

そのキャシーさんの「ユーモアの翻訳には文化の違いも関わるので、とても難しい」「日本人は感情を表さないので気持ちを汲みとって表現を工夫している。『ありがとう』を『I love you』と英訳した例もある」「擬声語が豊かな日本語には特有のリズムがある。これは考え方にも影響しているのでは?」などなどというお話、本当に興味深かったです。
そういえば、本のタイトルもそのままではなくて工夫されていますよね。この英語のタイトル、大好き。

最後に著者の岩佐さんから「この本に日本らしさを感じましたか?」という質問があり、英国人(と思われる)女性から「(日本らしいかどうかはわかりませんが)とても礼儀正しくて細やかで優しい世界を感じました」という感想がありました。
そんなすてきなイメージを日本と結びつけてくれたら嬉しいな。
日本の良さをもっと伝えたいとも改めて感じた夜でした。



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by londonsmile | 2017-10-03 06:31 | 翻訳のこと | Trackback | Comments(4)
週末、大英図書館のJAPAN NOWというイベントに行ってきました。

実は最初にイベントの告知を見た時、にわかに信じられなかったのです。
というのも、多和田葉子、川上弘美、柴崎友香、小野正嗣、松田青子(以下も敬称略します)という豪華な作家陣に加え、日本研究で有名なアレックス・カー、村上春樹の英訳もしているアルフレッド・バーンバウムの名前がずらりと書かれていたからです。
芥川賞作家が4人もいるんですよ。
「この人たちがみんなロンドンに来るの? いっぺんに?」と疑ってしまっても不思議ではないでしょう?

でももちろん、この名前を見て行かない訳には行きません。
どうなるんだろうとドキドキしながら即日申し込んだのでした。

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(大英図書館の地下鉄の最寄り駅はキングスクロス・セントパンクラス駅。
キングに因んでか、ホームには王冠のデザインのタイルが貼ってあることに今回初めて気付きました

当日行ってみると、告知の通り、日本の豪華作家陣や映画監督、日本文学を英訳している著名な翻訳家などが集まる夢のようなイベントでした。
外国での開催なのにすごいな、と思ったのですが、よく考えてみると、外国での開催だからかえってゴージャスなことになっていたのかもしれないし、つい最近発売になった英訳本もあるようなので、そのプロモーションも兼ねているのかもしれません。

講演の方は、多和田葉子と映画監督の安藤桃子が「日本の外からの影響」、川上弘美と柴崎友香が「日本のフィクション」、小野正嗣と松田青子が「日本のフィクションの翻訳」、アレックス・カーと英国育ちの日本人建築家シマザキ・タケロウが「古民家の再生」というテーマで、イギリス人モデレーターが話を進めながら、それぞれ1時間程度ずつのセッションをする形式でした。
翻訳のセッションには、上述のアルフレッド・バーンバウムと、山崎ナオコーラや柴崎友香の英訳をしているポリー・バートンも参加して、話をさらに膨らませてくれました。

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大英図書館での会場は、本館とは別棟のノレッジ・センター(Knowledge Centre)。
大きなレクチャールームのあるモダンな建物ですが、ブロンテ、ディケンズ、エリオットという英文学の大御所の名前がついた部屋もあり、ますます気分が盛り上がりました。

当日集まるのは日本人が多いのかと思いきや、イギリス人、あるいは少なくとも日本人には見えない人が8割強でした。
世界中で大人気のハルキ・ムラカミ以外にも、日本文学に興味のある方はずいぶんいるんですね。
年齢層としては、ご趣味か研究系かと思われる年配の方と、学生さんらしき若い人が多かったです。
みなさん、とても熱心にメモを取っていて、メモ魔の私もびっくり。
熱気ムンムンの客席でした。

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まず最初に、この日登壇されたほとんどの作家さんが普通に英語で話していらしたことに驚きました。
英語ができないだろうと思っていたわけではないのですが、あまりに流暢で自然だったので、単純に驚いたのです。
お話を聴いていて、留学経験のある方や翻訳もされている方がいるとわかり、納得。
さすが言葉の専門家、こういうところにもセンスの良さが出るんですね。

中でもドイツ在住の多和田葉子は、まるで英語圏で生まれ育ったかのように自然に話していて、その存在感に圧倒されました。
フランスに留学していたという小野正嗣は、たまにフランス語が混じってしまって慌てて直すという場面が何度かあり、どこか愛嬌のある様子がかわいらしかったです。

外国での集まりということもあってか、各作家の作品の紹介にも重点を置いていたようで、ほぼ全員が作品の朗読をしてくれました。
ご本人が日本語で朗読した後、通訳さんや英訳者の方が英語版を読むという形式。
日本語の原文と英訳をその場で比べられるのも、私にとっては貴重な機会でした。

朗読でとりわけ受けていたのが松田青子の『もうすぐ結婚する女』(『スタッキング可能』収録の短編)。
淡々と鋭いツッコミを入れているのにどこかユーモラスに話が流れるので、日本語朗読の時点で私もくすくすしていたのですが、ステージ上の小野正嗣は体をのけぞらせて声をあげて爆笑。英語版を読み始めても爆笑。
飾らないお人柄に、すっかりファンになってしまいました。

受けていたのは小野正嗣だけではありません。
『もうすぐ結婚する女』の英訳版の朗読が始まると、客席のあちこちからも笑いが漏れていました。
アンガス・ターヴィルの英訳がすばらしいこともあり、この小説のおかしみがロンドンの読者にも伝わったようです。
笑いって個人差もあるけれど、文化を問わない面もありますよね。

ちなみに松田青子は、登壇前にロビーを歩いている時から、ただ者とは思えないオーラを放っていました。とてもきれいな方です。
芥川賞受賞の時の印象とはずいぶん違って思えた川上弘美も、すてきな貫禄がついたとはいえ、誠実そうな魅力的な方でした。

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(休憩中のロビーは、この右側にあるカウンターでお茶やコーヒーを買う人や、販売中の英訳本を吟味する人で大混雑。
サイン会もあったせいか、本を買うのは長蛇の列になっていました。
ちなみに、こんな混雑の中を淡々と多和田葉子が歩いていたりしたのでした。すごすぎる!)

この日の話は、それぞれの作家の作品に関する話に加え、日本の「私小説」というジャンル、日本人のコミュニケーション、コミュニティーから外れた人を描くということ、性別をどれだけ意識するか、ディストピア小説などなどにおよびました。
個人的には、日本を離れた時に感じた日本の影響や、日本人の無常観という話が自分にも特に通じるものを感じて、興味深かったです。

こういうイベントでは、質疑応答の時間に、ここぞとばかりにほぼ自己主張のような発言をする人がよくいるものですが、この現象は万国共通なのか、それともたまたまだったのか、この日もそういうナゾの質問(あるいは発言)をした人がちらほら。笑
面白かったのは壇上の人たちの対応で、こういう場合、日本だったらもう少し戸惑いを上手に隠すんじゃないかなと思うところ、この日はモデレーターも率先して明らかに困った顔をしていたのです。
これがイギリス流なのかどうかはわかりませんが、素直な反応がなんだかおかしくなってしまい、変な質問をした人への怒りや戸惑いよりも、その場の面白い雰囲気を楽しむことに自然に焦点が移って、イライラせずに済みんでしまいました。
なんでも笑いに変える感じ、やっぱりこれはイギリス流の対応だったのかもしれません。

トークの後には、安藤桃子監督の映画『0.5ミリ』の上映もあったのですが、夜は先約があったので、私はここで会場を後にしました。
セッション中に予告編を観たのですが、不思議な設定ながら、ぐっと心にしみたひと言があったのです。
ネタバレ防止のために言わないことにしますが、短い言葉なのに、その場で泣き出しそうになる程のインパクトが私にはあったので、機会があったらこの映画も是非観てみたいです。

この日は豪華な作家さんにお会いできただけで楽しかったのですが、内容も非常に濃くて有意義でした。
一つだけ、もっと長い時間、話を聴いていたかったー!
お一人で講演されても聴き応えのありそうな方々ばかりなので、2人で1時間ずつという時間は短かくて、あっという間に時間切だったのでした。
実はランチ休憩が45分という短さだったので、主催者の方もかなりご苦労されたのだと思うのですが、せっかくの機会なのにもったいないな、とつい思ったのでした。
それも日本人だから感じることでしょうか。

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(販売していた本の一部。
この時期に発売になったものもあったようですが、本当に飛ぶように売れていました!)

今回お会いできた作家さんの作品は実はほとんど読んでいないのですが、お人柄を垣間見てから読書を始めるというスタイルも悪くないのでは、と勝手に前向きに捉えています。
というか、皆さん、本当に魅力的な方が多くて、どんなものを書くのかが気になり、作品を読まずにいられません!
今年は読書を増しやしたいと思っていたし、調べてみたらキンドルでもほとんどの作品が手に入るようなので、どんどん読んでみたいと思います。
(宣言しちゃって、自分にプレッシャーをかけます!笑)

おまけとして、この日は他に嬉しいことが2つもあったのです。
ひとつは、通訳を担当していたのが、イギリスでの通訳・翻訳者の集まりでご一緒している方だったこと。
聡明だなあと思っていて、通訳が上手と聞いていたのですが、噂どおりすばらしいお仕事でした。
こんな方と知り合いになれて幸せ。

そしてもうひとつは、しばらく連絡が途絶えてしまっていた方に会場でばったりお会いできたこと。しかも2人も!
そのうち1人は日本とは特に関係のない、歌のクラスで知り合ったイギリス人なので、勝手にこの機会にますますご縁を感じて、やっぱり読むぞー! と張り切っています。

作家の皆さんは、しばらく英国内の大学などで講演されるようですが、多和田葉子、安藤桃子、アレックス・カーのお3人は、2月28日(火)午後10時(日本時間3月1日午前7時)からのBBCラジオ3に出演されます。
英国にお住まいでご興味ある方は、ぜひ! リンクはこちらです。
放送後はiPlayer(ウェブ版再放送)で聴けるので、放送日が過ぎたらリンクを貼りますね。
(追記:この番組へのリンクはこちらです)

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by londonsmile | 2017-02-28 11:26 | 翻訳のこと | Trackback | Comments(4)
土曜日は1日出かけていました。
日本人もイギリス人も含めて、イギリスで日本語関係の通訳者・翻訳者として活動している方たちの団体の会合兼勉強会だったのです。
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普段は朝から出かけることはほとんどありませんが、この日は通勤時間と同じくらいに家を出ました。
寒い朝でしたが、土曜日だったので電車もバスも混んでおらず、快適。
まだ人が少ない街にいるというだけで、なんだかちょっと得した気分ですよね。
気持ち良い1日のスタートになりました。

この会には2年ぐらい前に入会しました。
通訳の方はそうでもないと思いますが、翻訳の仕事をフリーランスでしていると、人に会わずに家にこもっていることが本当に多いのです。
仕事のやり方も自己流、あるいは試行錯誤になるので、めまぐるしく状況の変わるインターネット時代に取り残されないかと不安になりやすいもの。
でもこの会に入ってからは、普段からメーリングリストで情報交換や質問もできるようになったし、会員の方に年に何度かお会いして直接お話しすることで交流も深まってきたし、本当に助かっています。

イギリスでの活動が長い日本人の方や、日本語ペラペラのイギリス人の方など、みなさん、お互い支え合おう、共に学ぼうという姿勢で、知識や経験を惜しみなく話してくださいます。
とても和やかな雰囲気なので、まだまだ新参者の私にも「あれ? この前ご挨拶しましたよね?」と声をかけてくださる方もいらして嬉しい。
普段は同僚もなく一人なので、貴重な経験をうかがったり、ちょっとした話を聞いてもらえたり、相談できたりするのは、本当に心強いのです。

この日は、経験豊富なゲストの方のお話を聞いたり、みんなで話し合いながら訳してみたり、会のこれからについて話し合ったりして、朝から夕方まで建物から一歩も出ずに充実した1日でした。

先輩やお仲間と話ができるのはとても心強いことですが、みなさんの活躍が良い刺激になるのことも、またとてもありがたいこと。
この日は特に通訳の方たちの頭の回転の速さ、お話のうまさに感心しっぱなしでした。
家であまり話さずにいることが多いせいか、昔はおしゃべりだった私も、今ではなんだか言葉がつっかえてしまって出てこないのです。英語だけじゃなく日本語でさえも!
やはり日々の訓練、努力は大切だと実感したので、私もみなさんを見習ってもっと勉強しなくては!

みなさんにいろいろ教えていただいたお返しに、私も何かできないかと思ったのですが、この日、私が貢献できたのは、大ブレイクしたピコ太郎のPPAPをご存じない方のために全編フリ付きで披露したこと(はい、軽く歌いましたよ・笑)、そして彼をプロデュースしている設定の古坂大魔王が実はピコ太郎本人で、PPAPの後に続編も出し、武道館ライブも決まったという情報をお伝えできたことでしょうか。
「よく知ってるねぇ。本当にイギリス住んでるの?」と言っていただけたのは、ある意味褒め言葉ととっておきましょう!笑
おもしろいこと、大好きなんです。

でも次は翻訳のことで貢献できるようにガンバリます!
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会場の最寄り駅だった地下鉄トットナムコートロード駅。
この周辺は新しい地下鉄エリザベスラインに向けて数年前からずっと工事をしているのですが、駅の改札から外側はすっかり新しくなっていました。

会合の後は、新年会と称して和食のお店に行ったのですが、それはまた話が変わるので、次回にしますね。
まるで日本の居酒屋さんにいるみたいに感じられて、不思議な感覚だったんですよ。


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by londonsmile | 2017-01-24 19:08 | 翻訳のこと | Trackback | Comments(4)
翻訳のお手伝いをした本が11月30日に刊行されました。
私はお手伝いをしただけですが、訳していてもその世界にひきこまれていくような面白い本だったので、ぜひご紹介させてください。
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タイトルは『アメリカの大学生が学んでいる「伝え方」の教科書』。
アメリカの数々の大学で20年以上にわたってスピーチの授業に使われている教科書を、狩野みき先生が日本向けに編集して監訳されました。

まず、私たち日本人にとっては、大学生の時からスピーチの授業を受けているという時点でちょっと驚きですよね。
一般に欧米の人たち、特にエリートの人たちは、人前でいとも簡単に堂々と話している印象がありますが、それは学生時代からのこういう勉強にも支えられていたんですね。
それに若いうちから自分の言いたいことを上手に伝えようと意識することで、社会人になっても仕事上のプレゼンだけでなく、プライベートでもコミュニケーション上手になっていくのではないでしょうか。
ただ何となく話しているのと、わかってもらおうと意識して話すのとでは、やはり結果も違ってきますよね。

この本では、スピーチの構成から話の内容、言葉の選び方、説得の仕方、資料の使い方、声の出し方まで、具体的なスピーチの例やテクニックを交えながら、どうしたら言いたいことがより伝わるかを詳しく説いています。
仕事のプレゼンだけでなく、人を紹介する時の話し方や授賞式でのスピーチなど、さまざまな場面で人前で話すコツにも触れていて、日常生活へのヒントもたくさんありました。

具体的なスピーチの例では、(原書では特に)アメリカの歴史や文化、社会問題に関わる内容が題材にたっぷり使われていて、スピーチの勉強をしながら学生の視野を広げる内容になっているのが教科書として素晴らしいと思いました。
個人的にはアメリカについて学ぶことが多くて楽しかったです。

もう一つ個人的なお話をすると、この本は私にたくさんの記憶を蘇らせてくれました。
私はアメリカ式の大学教育を受けたので、実はスピーチの授業を受けたのです。
おそらく違う教科書を使った(と思う)のですが、この本を読んでいて、そうそう、そういえばこんなことやった気がするなあ、とおぼろげな記憶が戻ってきました。
当時、英語の授業についていくのが精一杯だった私には、詳しい内容は頭に入らなかったようで、今思うと、それはとても残念。

それだけでも懐かしいのに、授業のことをなんとなく思い出すうちに、アメリカの影響を大きく受けていた学生時代の自分のことが次々と思い出されて、過去の自分が今の自分を支えてくれているような気がしました。
のんきな学生時代だったけれども、あの時があって今があるんだなあ、なんて。笑

お仕事なのに、こんなに楽しませてもらって申し訳ないと思うくらい面白かったこの本。
私にとって心に深く残る1冊になりそうです。

お店で見かけたら、ぜひ手に取ってみてくださいね。
アマゾンのKindle版も出ているので、海外の方でも今すぐ手に入ります♪


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by londonsmile | 2016-12-02 18:34 | 翻訳のこと | Trackback | Comments(2)
ロンドンに越してきてからも翻訳の仕事をしていますが、日本でしていた仕事の延長で、これまではビジネス関係が多かったのです。
でも、もともと本を読むのが好きで、本の関係で翻訳ができたらいいなーと思っていたところ、最近は少しずつ出版関係のお仕事もさせていただけるようになりました。
これからは本の宣伝も兼ねて(笑)、掲載許可をいただいたものはブログにも載せていきたいと思います。

記念すべき最初の本はこちら!

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先月刊行になったばかりの『英訳&手ぬぐい付き 日本の寿司:A Visual Guide to SUSHI Menues: With Tranditional Japanese TENUGUI Towel (Bilingual English and Japanese Edition)』(日本文芸社)。

お寿司について、そしてネタになる魚について、日本語と英語の両方で詳しく説明した本です。
お魚の説明は、生息地や名前の由来、江戸前の寿司ネタにする時の調理方法から名前の漢字の意味、由来まで、本当に幅広く、お寿司好きの私も初めて知る情報が満載でした。
お寿司の本なんていう楽しいお仕事をいただいただけでもありがたいのに、遠くからやってきた魚を職人さんが丁寧に調理してくれて初めて食べられることが改めてわかり、これからはお寿司をますます愛しく思ってしまいそうです。

この本、外国人の方へのプレゼントに喜ばれるんじゃないかと思うんです。
最近はお寿司、世界の広い範囲で人気ですしね!
日本語と英語が併記されているので、外国人の方と一緒に見ていただいても話がしやすいし、日本語ができない人でも、本をお寿司屋さんに持って行って本から注文することもできそうです。

また付録で付いている手ぬぐいも、背景にさりげなく魚の名前がたくさん盛り込まれた柄だったりして、なかなかかわいゆいのです。
手ぬぐいの使い方も図入りで説明がついていますよ。

実際に翻訳されたのはDaniel Jacob Gonzálezさんで、素晴らしい英訳のお手伝いをさせていただきました。
日本人の私としてはやはり英訳には苦労するので、こういう現場で英訳を見せていだけて、とても勉強になりました。

本屋さんにも並んでいると思いますが、確実に手に入れたい方はアマゾンhonto、楽天ブックスなどで扱っているようです。
よかったらご覧になってみてくださいね。

(上のリンクで、この本のページが開くようにリンクを貼ったつもりですが、楽天だけなぜか貼れません・汗
あとでまた試してみて、貼れたら、この部分は削除しますね)


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by londonsmile | 2016-07-10 07:42 | 翻訳のこと | Trackback | Comments(0)

londonsmile、ロンスマことラッシャー貴子です。翻訳をしています。元気な英国人夫とのロンドン生活も早いもので12年目。20歳の時に好きになったイギリスが今も大好き。英国内旅行や日々のいろいろを綴っています。お仕事の依頼やご連絡は、非公開コメントでお願いします。


by londonsmile