18世紀にラッセルズ伯爵家の邸宅として建設された広大な土地を有するカントリーハウスです。
最近ではテレビドラマのロケ地として使われたこのお屋敷、持ち主のラッセルズ伯爵家はロイヤルファミリーともご親戚。
エリザベス女王のおばさまにあたる方が嫁がれた伯爵家なのです。
また今回のツアーでは唯一、使用人が働いていた地下のお部屋を見学できたお屋敷でもありました。
当時の生活の様子をよりはっきり想像できて、まるでドラマを見ている気分。
それもとても楽しかったんですよ。
例によって、今回はまずゴージャスなお屋敷を拝見しましょう。
あら、いきなり絵はがきで失礼します。笑
お屋敷のゴージャスさに驚いて、建物全体の写真を撮りそびれていました。
これは18世紀のパラディアン様式の大きなお屋敷ですが、外観は19世紀に改修されています。
この特徴あるお庭はヘアウッド・ハウスのシンボル的存在でもあるのですが、これはまたお庭の回でご紹介するとして、今日はお屋敷のお話を。
実は私たちが去年ここを訪れた後、昨年英国で大ヒットしたドラマ『Victoria』(ITV制作)がこのヘアウッド・ハウスでも撮影されたそうです。
ロイヤルファミリーのご親族のお屋敷とあって、バッキンガム宮殿としてドラマに登場しています。
このドラマ、今秋から日本でもダウントンアビーの後の枠で放映が決まっているそう。
女王ヴィクトリアとはもちろん、英国が繁栄を極めていた19世紀のヴィクトリア女王のこと。
国が栄えた裏側で、個人的には多くのお子さんを授かりつつも若くして未亡人となり、亡き夫を生涯思って過ごしたというドラマチックな女性です。
日本で放映されるのはシリーズ1ですが、英国ではただ今シリーズ2の撮影中。
ヘアウッド・ハウスでも再び撮影が行われています。
どんなドラマか、ちょっとこちらをご覧くださいね。
ドラマの撮影に使われたことを記念して、ヘアウッド・ハウスでは今年10月29日まで、ドラマに使われた衣装などの展示が行われています。
ヴィクトリア時代のドレス、気になりますよね。
チケットの購入方法などの詳細は、(英語ですが)
このページをご覧ください。
さて、そのバッキンガム宮殿にも見立てられたというお屋敷、どんなところでしょうか。
入り口付近の古いライブラリー(old library)。
すでにゴージャスですね。笑
初代ヘアウッド男爵であったエドウィン・ラッセルズは、1759年にこの自宅を建てる際、「金に糸目はつけぬ、すべて最高のものにせよ」と言ったそう。
庭園作りはもちろん、われらがケイパビリティ・ブラウンが担当しましたが、建物の設計にも内装にも当時の一流の専門家を迎えています。
ベッドのたっぷりしたドレープが見事な来賓用の寝室(State Bedroom)。
特別なお客様用の寝室で、ドラマも撮影されたヴィクトリア女王もご即位の前にお泊まりになったそう。もともとヴィクトリア女王とご縁のあるお屋敷なんですね。
ゴージャスはベッドは、イギリスが誇る家具職人、トーマス・チッピンデールの作品です。実はこのベッド、しばらく忘れられていた時期があったそう。
ヴィクトリア女王がお泊まりになった後、この部屋はしばらく居間として使われていたので、その間ベッドは分解されてしまい込まれていたとのこと。1970年代に見つけ出されて資金が調達され、1999年の改装でようやく今の形に整ったそうですが、なにせ古い上、同じようなベッドがなかったため、仕組みのわかる人がおらず、組み立てはかなり困難だったとか。専門家や歴史家が協力しあった作業のおかげで、美しいベッドの再現とともに、古い技術が見つけ出されることにもなったそうです。
こちらはご家族の肖像画がかかっているシナモンの間(Cinnamon Drawing Room)。
シャンデリアの下あたりの壁ぎわに写っている棚は日本のものだそう。
きらびやかな音楽室(Music Room)。
家具に合わせてデザインされたカーペットは、建築当時のオリジナルだそう。
優雅な椅子を見ていると、この部屋に集まった紳士淑女がピアノの演奏に耳を傾けていた様子が目に浮かぶようですね。
レディーたちは扇子をひらひらさせちゃったりして。笑
東の寝室(East Bedroom)。
この部屋で目を引くのは、何と言っても中国風の壁紙。
でもこれも、持ち主の好みに合わなくなって、一時は巻いた状態でしまい込まれていたそうです。
私たちから見ると「美しい〜♪」というものも、毎日暮らしている人たちにとってみれば、好みに合わないこともあるんですよね。
おもしろいエピソードだなと思います。
こちらは長さが25メートル近くある大広間(Gallery)。
たくさんの絵画が展示されていて、観賞用の椅子もあったりして、まるで美術館のよう。笑
これまでに見てきたお屋敷に比べると、全体に華やかなロココ調という印象が強いヘアウッド・ハウスですが、図書室は少し趣が変わってより落ち着いた感じ。
ダイニングルームも少し落ち着いた感じとはいえ、ゴージャスです。
ヘアウッド・ハウスのお屋敷を見学していて印象に残るのが、細部にとても凝っていること。
私が特にみとれてしまったのは、天井でした。
ここはシャンデリアもすごい!
中でも特に華やかだったのはこの大広間の天井です。
古代ローマ帝国の遺跡が残るシリアのパルミラ風だそうで、色彩も豊かな装飾が25メートルの部屋の天井全体を貫いている様子は圧巻でした。
天井の凝った美しさという点では、今回のツアーではヘアウッド・ハウスが間違いなくいちばんだったと思います。
凝っているといえば、細部の美しい暖炉もいろいろ。
椅子だってこのとおり。
全体の豪華さに驚き、細部の美しさにため息をつくという素晴らしいお屋敷。
まさによい目の保養でした。
ご家族のお家としても大切にされているこのヘアウッド・ハウスでは、ご家族の歴史が垣間見られる展示もありました。
メアリー王女のお部屋(Princess Mary's Dressing Room)は、第6代伯爵夫人を迎えるために改装されたお部屋。
はい、この方が先ほどお話ししたエリザベス女王のおばさまに当たる方なのです。
英国王ジョージ5世のご長女、そしてジョージ6世(エリザベス女王のお父さま)の妹さまでもあります。
メアリー王女は若い頃から公務に熱心で、第一次世界大戦時には兵士全員にカードやチョコレートやタバコを届けたり、ウエストミンスター寺院での結婚式の後のパレードでは戦争記念碑に花嫁のブーケを捧げたりしていて人気が高かったとのこと。
第6代ヘアウッド伯爵のヘンリー・ラッセルズとご結婚されて、このヘアウッド・ハウスに転居された後も「ヨークシャー・プリンセス」として親しまれたそうです。
このお部屋、プリンセスのお部屋としては意外と落ち着いたムードでした。
ご趣味で集めたらしい小物、ご家族の写真など、当時の暮らしぶりがうかがわれるものを見ることができます。
ちょうどダウントンアビーと同じような時代ですね。
こちらはバスルーム。
当時としては最新の設備だったんでしょうね。
実は、このヘアウッド・ハウスの一般公開に踏み切ったのもメアリー王女でした。
結婚25年を過ぎた頃にご主人を亡くし、家具や絵画を一部売っても莫大な相続税を払いきることができなかったので、お屋敷を公開して入場料を資金に充てるためでした。
ロイヤルファミリーの自宅が開放されたのは英国で初めてだったので、王女の私生活が垣間見られるということで大きな話題になったそうです。
そんな歴史のあるヘアウッド・ハウス、さらにユニークだったのは、ご家族がお住まいだった優雅な部分だけでなく、使用人たちが働いていた場所も見学できたことです。
使用人が忙しく歩き回っていたと思われる地下の廊下。
やっぱり上の階に比べると、少し薄暗いし、装飾もなくてさっぱりしていますね。
各部屋の名前が書かれた呼び鈴。
わー、まさに『ダウントンアビー』の世界♪
「ちぇ、また呼ばれたぜ」とか同僚にこぼしながら、上の階に馳せ参じたこともあったのかな。
こちらはスイッチボードかな。
時代がかった感じがなんとも愛しい。
私たちが行った時には一部改装中で見られませんでしたが、ふだんは当時の食器なども見学できるようです。
豪華なんでしょうねぇ。
こちらは昔のキッチン。
おー、パットモアさんがお料理しながらデイジーを怒鳴っていそうです。笑
(『ダウントンアビー』を観ていない方、ゴメンなさい!)
こういう写真を見ると、お料理する人たちの向こうで、座って書類の整理をしていた人たちがいたことがわかりますね。
ますます妄想が膨らみます。笑
このヘアウッドハウスのさらにおもしろい点は、歴代の使用人の名前や職名、あれば写真などをウェブ上で公開していること。
こんなことをしているのは、私が知っている限りでは、今のところここだけです。
それだけ記録もしっかりしているのでしょうし、使用人を大切にしていたということかもしれません。
ご興味のある方は、ぜひ
このページをご覧くださいね。
写真を見ると、みんななんだか楽しそうです。笑
見どころがたくさんあって、長くなってしまいましたが、本当にゴージャスで、それでいて温かい感じのするお屋敷でした。
次回ご紹介するお庭はこれまた広大で、自由行動で散策することになっていたので、真面目な話、私は迷いました。汗
キーワードは、広い敷地と珍しい動植物と現代の新しい試み。
あ、多すぎました?笑
どうぞお楽しみに。
(お屋敷のシンボル的な存在であるお庭を眺めながらお茶や軽食がとれるテラス。
内容はサンドイッチ程度ですが、ゴージャスな眺めのおかげでとても豊かな気分になれます)