ロンドンで浄瑠璃を観る! 『越後國 柏崎 弘知法印御伝記』

週末は、大英図書館のイベントに行ってきました。
なんとロンドンで日本の浄瑠璃を観たのです!

歌舞伎は好きで日本にいた時はよく観ていたのですが、浄瑠璃は観たいと思いながら未経験だったので、大いに張り切って出かけてきました。

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今回はインディーが見つけてくれたので、予約もすべて彼まかせで、ロンドン公演はたった2日間だけの貴重な機会、ということしか知らずに出かけました。
ところが、時間が来て始まってみると、あらら、意外にお話が長かったのでした。笑

でもお話を聞いていたら、今回上演された「越後國 柏崎 弘知法印御伝記」は、江戸時代に日本から台本が持ち出され、1962年に大英博物館で発見されて、300年ぶりに上演されているものだとわかり、びっくり!
300年もの間、浄瑠璃の台本が外国で保管されていたんですよ。
なんて壮大でロマンチックなんでしょう。

そして、この台本を大英博物館で見つけたご本人である早稲田大学名誉教授の鳥越文蔵先生が、その時のことを詳しくお話ししてくださいました。
「イギリスにいたのは50年も前のことで、英語は忘れてしまったので、日本語でお話しします」とおっしゃる先生はどことなくユーモラスですてきな方でした。
この台本が驚くほど貴重なものとわかってから、大英博物館の対応はとても理解があっておおらかだったそうです。

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これはロビーに大きく展示されていた『越後國 柏崎 弘知法印御伝記』の台本。
今ではデジタル化されて、世界中のどこからでも見ることができるそうです。
勢いのある文字でぎっしり書き込まれていて、すごい迫力ですね。

そして、次にお話しになる方のお名前を聞いて、私は先週びわの大人買いをした時と同じくらいときめいてしまったのです!
というのは、その方は日本文学や日本研究で有名なドナルド・キーン先生だったから。
肩書きがいろいろおありですが、いちばん有名なのはコロンビア大学名誉教授でしょうか。
先生のご活躍を学生の頃から拝見し、上手な日本語を聞いていて、生まれ育った言葉や文化でなくてもこんな風に自由に話せるようになるし、文化を深く知ることができるんだなあといつも励まされていましたし、その姿勢を学びたいと思っていたのです。
そのキーン先生にまさかロンドンでお会いできるなんて!

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この日いただいたパンフレットによると、最近、ドナルド・キーン・センター柏崎が設立され、キーン先生のお人柄やお仕事が展示されているそうです。

キーン先生はこの『越後國 柏崎 弘知法印御伝記』の日本での再演にご尽力されたそうで、この日は浄瑠璃のことや、この台本が日本を離れてしまったいきさつなどについて詳しくお話ししてくださいました。
キーン先生が英語でお話しになるのを聞くのは実は初めてだったので、とても新鮮でした。笑

ちなみにこの後、「越後國 柏崎 弘知法印御伝記」のあらすじを話ししてくださったロンドン大学SOASのガーストル教授は、大学時代にはキーン先生に、大学院時代は鳥越先生に指導を受けたそうで、少し照れながら「大変緊張いたします」とおっしゃっていたのも、ほほえましい光景でした。

さて、いよいよ上演です♪
第二の故郷でのいわば凱旋公演です。

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(開演前のどんちょう)

この日は第2幕と第3幕の上演で、主人公がお坊さんになるいきさつの部分でした。
話に聞いていたように浄瑠璃のお人形は動きが繊細で、人形遣いさんたちのあうんの呼吸が絶妙。
そして話さない登場人物に代わって全員の声色を使い分ける越後角太夫さんは、声の表情が豊かでお話にグッと引き込まれました。

音楽は、拍子木の他は、角太夫さんが弾く三味線と彼の歌声だけだったし、殿さまやお姫さまが出てくるシーンもなかったので、外国人の方の目や耳には少し地味に映ったかもしれませんが、私も笑ってしまう部分では大きな笑いが起きたりしていたので、話は伝わっていたようだし、皆さん、楽しんでいたようです。
一緒に行ったイギリス人のお友達は、「あのシンガー(角太夫さんのことね・笑)、感情に訴えるわね〜」と感激したようでした。

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終演後は角太夫さんと人形遣いの方と主人公のお人形がご挨拶。
お人形もお辞儀しているというのが、外国人の方々に受けていました。

さらに出口のあたりで、ひとりひとりにお土産が♪

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カラフルな紙ふうせん。
この公演のためにわざわざ作ったようで、演目の名前や「ロンドン公演記念」の文字も見えます。
一緒にストローが入っているのが、なんだかほほえましくないですか?笑
今どきは、紙ふうせんをストローで膨らませるのかな。
それとも外国人の方用の配慮でしょうか。

トークがあることを知らずに行ったので、最初は「思っていたよりお話が長いな」なんて思ってしまいましたが、あのお話があったからこそ心から楽しめた初めての浄瑠璃経験でした。
帰ってきてから調べてみると、鳥越先生もキーン先生もかなりのご高齢。
両先生じきじきにお話をうかがえたのは本当に貴重な機会だったと思います。

お年寄りのお話を聞くのが好きな私は、両先生を尊敬するだけでなく、おふたりのチャーミングなおじいちゃまぶりにも感激。
この公演のためにロンドンまで飛行機でいらしたおふたりの熱意もしっかり感じました。

こうして、長く眠っていた第二の故郷で演じられるという特別な演目が私の浄瑠璃デビューになりました。
お話を聞いて背景も知ることができたので、浄瑠璃の世界、もっとのぞいてみたくなってしまいました。
次の一時帰国で行ってみたいな。

Enjoyed the performance of Joruri, Japanese traditional puppet, at British Library.
It was actually my first time to see puppet performance (not Sesame Street sort!) and I was just fascinated with delicate movements of puppets, wonderful coordination of puppeteers and amazing expression and wonderful voice of the singer.
Also this particular script was sleeping at British Museum and miraculously discovered after 300 years! How romantic :)

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by londonsmile | 2017-06-04 08:43 | ロンドン・エンターテインメント | Trackback | Comments(0)

londonsmile、ロンスマことラッシャー貴子です。翻訳をしています。元気な英国人夫とのロンドン生活も早いもので17年目。20歳の時に好きになったイギリスが今も大好き。英国内旅行や日々のいろいろを綴っています。お仕事の依頼や写真掲載のご連絡は非公開コメントでお願いします。無断掲載はご遠慮ください。


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