北イングランドの英国ガーデンをめぐる旅その8 長く愛されるブラウンの庭、トレンサム・ガーデンズ(スタフォードシャー州)

北イングランドの英国ガーデンをめぐる旅、2日目はスタフォードシャー州にある トレンザム・エステート(The Trentham Estate)内のトレンザム・ガーデンズ(Trentham Gardens)からスタートしました。

陶器の街として有名なストーク・オン・トレントの近くに位置するトレンザム・ガーデンズは、18世紀の終わりごろに英国が誇る造園家、ケイパビリティ・ブラウンが設計に携わったお庭。

その後、時間が経つにつれて元々の形が少しずつ損なわれてきたので、ブラウンの生誕300年にあたる今年に向けて、なんと3年前からコツコツと作業を重ねてきたそうです。
今年はブラウン生誕300年の記念イベントが英国各地で開かれていますが、このトレンザム・ガーデンズはその中でもリーダー的な存在。

有料のお庭としては、入場者の数が英国内で第5位という大人気のトレンザム・ガーデンズ。
さて、どんなお庭でしょうか?
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(イタリア庭園の一部より)

ここではエステートの担当者、ティムさんがお庭を案内してくれました。
人のよさそうなティムさんによれば、お庭のあるトレンザム・エステートの歴史は古く、最古の記録は11世紀の1086年に遡るそう。
王家の鹿公園として利用されたこともありましたが、その後はマナーハウスとして様々な領主を迎え、1759年から1780年にかけて、いよいよケイパビリティ・ブラウンが造園家として雇われました。

その時点ですでにマナーハウスのお庭はあったものの、ブラウンはそこに手を入れて改造したそうです。
改造の大きなポイントは、湖を大幅に拡大して幻想的に見せたこと、単なる野原だったところを緑地に整えたこと、敷地内のトレント川や小川の流れを変えたこと、そしてやはりすでにあったお屋敷に手を入れたこと、などなど。

今回のツアーでは、ブラウンが手がけたお庭をいくつか見学しましたが、いずれも大規模で大胆な改造が多いのが特徴という印象を受けました。
彼はお庭全体の形を造るのが専門で、具体的なお花の種類や育て方などにはあまり関わらなかったとのこと。
「庭師」というより、「造園家」という表現が合っているようですね。

ブラウンが大きくしたという湖はこちら。
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入り口から橋を渡ると目の前にこの湖がぱーっと広がって気持ちが大きくなり、別世界に連れて行かれたような気分になります。
この日も前日に続いてお天気がイマイチでしたが、湖がひっそり静かに、でも雄大に広がる様子はわかっていただけるでしょうか。
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湖の周りも、ブラウンが作った後に少しずつ変わってしまったので、今回の改造でさらに整えたそうです。
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ブラウンの時代も、こんな風に水辺の植物が植わっていたのかな、と想像してみてりして。笑

入り口に近い湖畔には、2年前からポピーや矢車菊、野菊などの草花を植えているそうで、今ではかわいらしい牧草地になっています。
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お花がちょっとわかりにくいので、アップにしてみましょう(敷地内の他の部分のお花の写真も使っています。「イメージ」ということで!笑)。
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こういう草花、イギリスでは人気なのです。私も大好き。
水彩画のような繊細な色で、自然に生い茂っている雰囲気が味わえますが、実はみな一年生なので、毎年植え替えているそうです。

ブラウン生誕300年記念に向けたトランザム・ガーデンズの改善方針は、「エステートの歴史的な特徴を深く理解した上で、これからも維持していける今の時代の庭のあり方を探る」というもので、ブラウンが造ったものを取り戻すだけでなく、将来に向けて新しい形も取り入れているそうです。
古き良きものを大切にしながら新しいものを共存させていく姿勢が前向きですね。

その「新しい」部分の一環としてなのか、トレンザム・ガーデンズには地元アーティストのモダンなアート作品が色々置かれています。
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どちらの写真もタンポポや妖精をモチーフにした地元のロビン・ライト(Robin Wight)さんというデザイナーの作品。
トレンザム・ガーデンズにはライトさんの作品が数点あるのですが、こちらのサイトに行くと意外とお手軽に購入できるようですよ。
大きなお庭をお持ちの方、いかがですか?笑

そして、このモダンアートのすぐ近くには、こんな彫刻も。
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こちらは15世紀のイタリア彫刻を19世紀に復元したもので、メドゥーサの首を切り落としたペルセウス。
モダンなタンポポのすぐ横にこれが置いてあるのは、まさに新旧アートの競演ですね。

さらにブラウンは敷地内を流れるトレント川の流れも変えたそうです。
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そして今回の改善では、川べりの土手を取り除いて、周りの緑地と馴染ませ、より自然に見せる工夫をしたそう。
あ、そうか!
今年のブラウン生誕300年に合わせるために3年前から作業を始めたと最初に聞いた時、何て気の早い!と実は思ったのですが、「周りと馴染ませる」とか、「植物がある程度成長するのを待つ」という工程があるから、3年前から始めても決して早過ぎはしなかったんですね。
庭づくりとは、一朝一夕にはできない時間のかかる作業なんですね。
きっと根気がいるんだろうなあ。
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こんな何気なく自然に見える風景も、実はしっかりデザインされているのかもしれません。
お庭をデザインする人の頭の中を見てみたい。笑

そしてトレンザム・ガーデンズの中でも、しっかりきっちりデザインされているのは、何と言ってもたイタリア庭園でしょう。
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整然としたこの広いイタリア庭園、残念ながらブラウンの作品ではなく、後の19世紀にお屋敷の建物を設計した建築家、チャールズ・バリーのデザインです。
あれ? この名前、どこかで聞いたことがありませんか?
実はこの方、ロンドンの代名詞にもなっている国会議事堂の時計塔ビッグベンや、ドラマ『ダウントンアビー』のロケ地となったハイクレア城の設計もした著名な建築家なんです。
ビッグベンを作るような人が、このお屋敷や庭園を作っていたなんて、トレンザム・エステートはかなり裕福だったんでしょうね。
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色や形、高さなどが様々で、動きも面白く計算されているイタリア庭園。
花壇の数は70カ所、お花の種類は全部で400種類にも及ぶそう。
ほとんどが多年生で、お花の季節もそれぞれに計算されているので、真冬を除いてほぼ一年中楽しめるお庭です。
あ、冬は雪が降り積もることもよくあるそうなので、それはそれで美しいですね、きっと!

そのイタリア庭園の中に、ひときわ美しいお花が咲き誇っている花壇がありました。
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この花壇に使われているバラは、日本でも有名なバラ育種家のデビッド・オースチンさんのものがほとんどだそうで、花壇自体も彼の名前をとってデビッド・オースチンのバラの花壇(David Austin Rose Border)と呼ばれています。
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私は基本的に草花系が好きなのですが、こうして見ると、やはりバラはお庭のお姫さまですね♪
みずみずしい花びらや、淡く美しい彩りにうっとりしました。

するとここで、ティムさんがわざわざ私の方を向いてくれたのです。
「あなた、日本からいらしてます? あのね、後ろ側のあの藤、日本から持ってきた藤なんですよ」
え? ほんとですか!?
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イギリスでも藤は人気で、よく大きなお家の壁をつたうように植えられているのですが、言われてみれば、この藤はちょっと違うかも。
イギリスの藤より長くしだれていて、日本舞踊の藤娘の衣装に使われるような華やかさがあります。
藤に違いがあるなんて考えてもみなかったので、こんなところでも目からウロコが落ちました。
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トレンザム・ガーデンズは地元の人にもとても愛されているようで、私たちがうかがった日は日曜日ということもあり、地元の人が犬を連れたり、カップルで手をつないだりして、あちこちお散歩していました。
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なんだか私たちまで和んじゃいましたよ。

先ほど、有名な建築家のバリーがこのトランザム・エステートのお屋敷を設計したと言いましたが、19世紀に建てられたこのお屋敷、実は残念ながら誰も住まなくなってしまった今では、廃墟のようになってしまっています。
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使われていない建物って悲しいですね。

ビクトリア時代にこの地域は陶器産業で栄えるようになりましたが、同時にトレント川の汚染を引き起こしてしまい、同じ川が敷地内に流れるトレンザム・ガーデンズも悪影響を受けてしまいました。
1930年代にはお庭が一般に公開されたり、ダンス会場として人気になったりもしたそうですが、結局は開発業者に売られ、建物自体は20世紀に入った頃に一部取り壊されたそうです。
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その後、歴史的な敷地を活用して観光地にする様々な試みが行われたものの、大きな成功には至らず、今はとりあえずお庭だけを一般に開放している状態。
一部取り壊されているものの、歴史的にも建築的にも価値の高いこのお屋敷を高級ホテルにする案も検討されているそうで、どこかで資金調達がうまくいって、当時の豪華な様子が伝わるように息を吹き返してくれることを私も心から願っています。

お屋敷のある場所から入り口に戻る道は、川辺の緑地。
草花が咲き乱れる遊歩道になっていましたが、きっとこのお花も計算されて植えられたものなんでしょうね。
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こんなに曇った日でも、お弁当を持ってピクニックしている人もいました。
やっぱり自然の中で食べるご飯は美味しいんですよね。
美しく設計されたお庭だったらなおさら♪

ちなみに、トレンザム・ガーデンズのすぐ外には、新しいお店がたくさん出ています。
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ほぼ朝一番に撮った写真なのであまり人がまだ歩いていませんが、カフェや雑貨や小物を売るお店が入り口の前にずらっと並んでいました。
トレンザム・ガーデンは、一般への公開を一度終了して12年前に再開しましたが、その時にお店を大幅に増やしたそう。
私たちがお庭から出てきた時には、地元の人がたくさん出て賑わっていましたよ。
お店の部分は入場無料なので、日曜日のブランチやショッピングに来たのかもしれません。

ちなみにガーデンの入り口に隣接して、とても大きなガーデンセンターがあり、植物やガーデニング用品、家庭雑貨などをいろいろ売っていました。
このガーデンセンターも地元の人に大人気なんだそう。

長い歴史を経て、今また地元の人に愛されているトレンザム・ガーデンズ。
素晴らしいお庭だけでなく、これからはお屋敷の方も修復されて、昔のような優雅な姿を見せてくれますように。
そうしたら、ここに行く楽しみがまた増えますよね♪

Once designed by Capability Brown in the 18th century, Trentham Gardens, Staffordshire, offers a vast quiet lake, charming meadow, gorgeous Italian Garden, Japanese wisteria, David Austen roses, partly demolished huge manor house which is waiting for new development plans for its new life, and much more.
This is where the tradition meets modern life and I saw a lot of "capability" there! :)


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by londonsmile | 2016-11-17 08:16 | Visit Britain | Trackback | Comments(0)

londonsmile、ロンスマことラッシャー貴子です。翻訳をしています。元気な英国人夫とのロンドン生活も早いもので12年目。20歳の時に好きになったイギリスが今も大好き。英国内旅行や日々のいろいろを綴っています。お仕事の依頼やご連絡は、非公開コメントでお願いします。


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