最後の駆け込み、ロンドン漱石記念館

日曜日はもうすぐ閉館になるロンドン漱石記念館に行ってきました。

大好きな明治の文豪、夏目漱石は大好きな作家で、今でも嫌なことがあった日は、よく『我輩は猫である』を読み返して、気分を楽しくさせたりしています。笑
ユーモラスでいいんですよ〜。

その漱石、1901年から約2年間ロンドンに留学して、英文学の勉強をしていました。
そしてこの記念館は、在英中の最後の下宿先の向かいの家にあるとのこと。
漱石研究家の恒松郁生さんという方が1984年からということなので、もう32年続いたんですね。

実は私はロンドンに留学した1992年に一度こちらに伺っているので、今回で二度目の訪問になるのです。
記念館や周りの土地のこと、どのくらい覚えているのかな、と自分でも興味津々でした。
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記念館があるThe Chaseという通りの標識。
なんだかいわくありげなカッコいい名前ですね。

漱石記念館は、クラパムコモン(Clapham Common)という良い雰囲気の住宅街にあります。
実はここ、わが家からバスで1本という便利な場所だったのですが、ここに行こうと思って調べるまで気づきませんでした。
もっと早く行けばよかったなあ。
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開館の午後2時までに時間があったので、少し周りをぶらぶらしてみることにしました。
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コモンというのは、誰でも自由に使える広い緑地のこと。
お元気もそう悪くない日曜日だったので、ベンチに座る人、走っている人、買い物袋を下げて歩く人などなど、たくさんの人が出ていました。

ロンドン留学中に神経衰弱に悩まされていた漱石は、気晴らしに自転車に乗ることを下宿先で勧められ、この緑地でも練習したと言われています。
この日も自転車で通る人を見る度に、つい漱石の様子を想像しちゃいました。笑

ちなみにもう一箇所、自転車の練習をしたというラベンダー・ヒルという道は、私の歯医者さんがあるところ!
これまた勝手にご縁を想像して、ニヤニヤ。
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おおー、なんだか気持ち良く晴れてきました。
ちょっと住宅も見てみましょうか。
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立派なお宅も多いのです。
もともと裕福な人が住む地区だったんでしょうね。
賑やかな市内から少し離れているので、ここだと大きな家を建てやすかったのかもしれません。
建物はビクトリア朝のものが多いようでした。
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このお家には著名人が住んだ家に貼られるブループラークがありました。
写真では見えないと思いますが、これはイギリスの作家のグレアム・グリーンのもの。
なんだか文学の香りのする町ですね。
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変わった葉の木も発見。こういう葉っぱ、初めて見ました!
これはイチジクの一種かしらん。それともヤツデの仲間かしらん。
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記念館のパンフレットにも写真が使われていたポスト。
漱石が暮らしたビクトリア時代からあったものです。
漱石も、ここから手紙を出したかな、と想像が膨らみますね♪

The Chaseが下り坂になりかけた辺りに、ブループラークのある家が見えてきました。
これが漱石が下宿した家です。
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ちょうど改装中で見えにくかったのですが、漱石の名前が書いてありました。
この建物は、漱石の渡英100年を記念して、2002年に歴史的建造物に指定されたそうです。

そして、その真向かいにある建物がこちら。
漱石記念館の入口です。
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閉館直前の日曜日ということもあり、開館時間の2時前からぽつぽつと日本人らしき人達が集まって、家の前で待っていました。
私たちも早く到着組だったので、周りをキョロキョロしながら時間待ち。

そして開館。
ドアのブザーを押すと、「どうぞお二階へ」と声がして、表の戸が開きました。

言われた通り2階にあがると、「こんにちは」の声とともに、この肖像画が目に入ってきました。
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中で料金をお支払いして(一般4ポンド、学生さんなどは割引があるようです)パンフレットをいただいて、あとは自由に見学。
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お部屋2つ分と廊下の壁に、漱石の留学の様子がわかる資料や写真がぎっしり展示されていました。
漱石が持っていたものと同じ英語の文献、漱石が在英中に行った劇場のパンフレット、師事した先生の写真や、悪筆だと漱石も書いているクレイグ先生の手書きの手紙のコピー、漱石関連の出版物や各国語への翻訳書などなど。
これだけ情報や資料を集めるのは本当に時間も労力も必要だっただったと思います。
そして、そんな資料や写真に囲まれて、私の頭の中はぼんやりと漱石がいた頃の1900年頃のロンドンへ、そして1992年のロンドンへ。

1992年にロンドンに留学した時、到着して数日後、まだ学校が始まる前に、私はこの漱石記念館にうかがいました。
夏目漱石が好きだったので、ロンドン留学の先輩という縁ができたことが嬉しかったのです。

その日は漱石の『倫敦塔』にでも出てきそうな重苦しい曇り空でした。
今のようにGoogleマップもなかったので、当時はみんなが持っていたLondon A to Zというロンドンの地図を手にしっかり握りしめて、地下鉄の駅からの道を不安に思いながら記念館に向かったことを今でもよく覚えています。

まだ学校も始まっていなくて不安だったんでしょうね。
展示をじっと見入って、ロンドンの様子を必死に探ろうとしていた気がします。
展示してあるのは、もう100年前のロンドンなんですけどね!笑
そして神経衰弱になった漱石を想像して、自分もノイローゼになるんじゃないかしらんと心配したりして。笑

今回、すがすがしい秋晴れの日に、イギリス人の家族と一緒に訪れた記念館は、まったく違う印象でした。
私の英語もその時よりはマシになったし、ロンドンの様子もずいぶんわかるようになりました。
何よりインターネットの普及で日本との距離がぐんぐん縮まり、活字中毒で寂しいどころか、テレビ番組だってこちらでもすぐに見られるし、日本の家族や友達の顔を見ながら無料で話もできます。
あの時の不安な私に教えてあげたい。
心配しなくても何とかなるよ、と!笑
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記念館の裏窓からの景色。
テレビのアンテナ以外は、きっと漱石が暮らした時代をほとんど変わっていないんだと思います。
時間が経って、変わるものもあり、変わらないものもあるんですねぇ。
と、またおセンチモード。笑

記念館の展示はとても充実していましたが、閉館前のラッシュで、とにかく大混雑でした。
前日の土曜日もかなり慌ただしかったそうです。

この日は館長の恒松さんはいらっしゃいませんでしたが、おそらく奥様かな、という方と、お忙しい合間をぬってほんの少しだけお話しさせていただきました。
もともと、漱石の没後100年の今年か、生誕150年の来年に閉館することを考えていたそうです。
閉館後に資料を引き取りたい、買い取りたい、という話がずいぶんきているそうですが、まだはっきり決まっていないとのこと。
ただ、いずれはどこかの博物館のようなところに展示するのがいいのかなあというお考えはあるそうです。

恒松さんと関係者の方々のこれまでのお仕事に感謝しつつ、漱石の作品が今でも読める幸せをかみしめつつ、留学時代の自分も振り返った不思議な時間でした。

この記念館、残念ながら9月29日で閉館します。
お時間のありそうな方、ぜひいらしてみてください。

London Soseki Museum
80b The Chase, Lambeth, London SW4 0NG
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帰りに通ったThe Chaseの道ばた。
秋の午後の光がぼんやりと塀にうつる様子が、どことなく『硝子戸の中』や『夢十夜』を思い出させてくれました。
また漱石を読もうっと♪

と、良い気分でここまで書いてきて気がつきました。
前に書いた猫の広告がある駅に行きそびれたーー!

ここにはバスで行かれることに気づいて喜んでしまい、すっかり猫の広告の事を忘れていました。
しまったー!
しかも広告は昨日まででした。
また同じような企画が持ち上がることを願うばかりです。

せっかくおセンチに終わりたかったのに、オチがついちゃった私の日曜日でした。
とほほ〜ん。


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Commented by Lily of the Valley at 2016-10-07 02:07 x
ロンスマ 様
びっくり!!
つい、10分前までBBCの"Pride and Prejudice"DVDの前編を観ていたところなので、お屋敷のファサード写真を見て、すぐどのシーンかわかりました♪
前回のお庭は大変魅力的だけれどタクシーを利用しないと無理ですが、こちらは鉄道駅から徒歩で行けるので、是非、行ってみようと思います!!
マンチェスターもリヴァプールへも行ったことがないので、よいきっかけになりました。ありがとうございます(*´▽`*)
Commented by londonsmile at 2016-10-08 00:36
*Lily of the Valleyさん*
BBCのPride and Prejudiceご覧になったんですね。ライムパークをご紹介した記事のお屋敷の写真、ドラマのシーンに似てましたよね?笑 
カントリーサイドにあるお屋敷やお庭は、とても美しいものの、おっしゃる通り車がないと不便ではありますね。だからこそ街から離れていて静かで美しいというのもあるので、悩ましいところです。観光でいらっしゃる時には交通手段の確保が大切になりそうですね。
ロンドンはもちろん観るところも多くて魅力的な街ですが、地方にも良いところがたくさんあるので、これからもご紹介していきたいと思います♪ ご覧いただいてありがとうございます。
by londonsmile | 2016-09-27 16:47 | 私の中の日本人 | Trackback | Comments(2)

翻訳をしているラッシャー貴子です。元気な英国人夫とのロンドン生活もはや12年目。20歳の時に好きになったイギリスが今も大好き。英国内旅行や日々のいろいろを綴っています。お仕事の依頼やご連絡は、とりあえず非公開コメントでいただけると嬉しいです。


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